下腹部痛は骨盤腹膜炎のサイン!?クラミジア感染に気づかず、不妊のリスクもあった女性の体験談

都内の大手出版社で主婦向け雑誌の編集者として働いている涼香さん(仮名:28歳)は、ある日、下腹部に鈍痛を感じるようになりました。その時期はちょうど仕事が〆切前で多忙を極めており、慢性的な睡眠不足の状態だったので、「疲労が溜まり過ぎているかもしれない」と思っていました。

下腹部痛は病気の危険サイン

しかし、それから数日経っても下腹部痛は治まらないばかりか、痛みが鋭くなってきて、頻繁に下痢をするようになりました。さらに生理予定日はまだ大分先だというのに、膣から生理と同じような量の出血(不正出血)がありました。ここに至り、涼香さんはようやく事の重大さを認識して顔面蒼白となりました。

その翌朝、会社の上司に欠勤の連絡をして、電車で婦人科へ行くつもりでしたが、下腹部痛と吐き気のためベッドから起き上がるのもつらいほど症状は悪化していました。涼香さんは同居している母親にタクシーを呼んでもらい、這うような姿勢で家を出ました。

症状がことのほか重かったので、涼香さんの母親は婦人科のクリニックではなく、少し離れた大学病院へ行くようにタクシーに頼んでいました。現在の大学病院は、救急性のない患者さんの受診過多による混雑を避けるために、かかりつけ医による紹介状なしに受診すると、5,000円前後の特別料金がかかるのですが、娘さんの症状を見て救急性が高いと判断されたのでしょう。

大学病院の様子

結果的にこの判断は正解でした。婦人科で医師による内診、膣分泌液の検査、血液検査、エコー(超音波)検査を矢継ぎ早に行った結果、涼香さんの下腹部痛の原因は、クラミジア感染による炎症が骨盤腹膜にまで広がる「骨盤内腹膜炎」だとわかり、すぐ入院して治療を行うことになったのです。

クラミジア感染症は、性病のなかでも患者数が多いため、認知度は非常に高いのですが、自覚症状が現れにくいということはあまり知られていません。後から当時を振り返ると、おりものの量が少し増えたり、排尿時の違和感などを感じたこともあったそうですが、疲労やホルモンバランスの乱れが原因と思ったため、特に気に掛けていなかったとのことです。

不妊や子宮外妊娠の恐れ

涼香さんの場合のように、本人がクラミジアの感染に気が付かないまま、炎症が膣から奥の臓器(子宮・卵巣・卵管)にまで拡大し、下腹部痛や吐き気、人によっては高熱、悪感などの症状が出るまで病気を放置しているケースは少なくありません。

骨盤内の臓器が炎症で癒着していると、卵子の通り道が塞がれたり、精子の着床が困難になるため、不妊や子宮外妊娠の原因になることがあるので、将来、妊娠を希望している女性にとっては恐ろしい病気です。実際、涼香さんを診た医師も「あと少し診察の機会が遅れていたら、手術をしても妊娠は困難だった」と言っていたそうです。

涼香さんは安静状態が絶対でしたので、そのまま入院し、お腹に溜まった膿を除去するための外科手術を行った後、抗生物質の点滴による治療を1週間にわたってうけました。そして容体が回復した後に退院し、引き続き抗生物質の服用による治療を行い、炎症反応が完全に消えたことを確認して、ようやく治療を終えました。

性病の感染予防にコンドームは必須

そもそもクラミジアに感染するきっかけとなったのは、酔った勢いで彼氏とコンドームを使わないでセックスをしたことだそうです。入院当日にスマホのメールで彼氏にクラミジア感染の事実を伝えたら、彼氏もすぐに検査を受けて、菌の存在が確認されたと同時に治療を開始したそうです。

骨盤腹膜炎の原因菌として最も多いのは大腸菌ですが、近年増加傾向にあるのが、涼香さんが感染したクラミジア、そして淋菌です。また子宮内避妊器具(IUD)の交換を怠って長期使用したため、菌が繁殖して炎症につながることもあります。

死に至る可能性という点では、HIV感染症(エイズ)が最も恐ろしい性病といえますが、早期発見・早期治療の機会を逃してしまったクラミジア感染症と淋病も今回のようなケースがあるので、女性の方はセックスの際にコンドームを付ける、不特定多数のパートナーを持たないなどの十分な注意が必要です。

自覚症状が現れにくい性器クラミジア感染症は放置していると不妊の原因になります

90年代初頭、性病として感染者が国内で最も多かった淋病を抜いて、今日に至っているのがクラミジア感染症です。この性病はクラミジア・トラコマチスという細菌とウイルスの中間的な病原体に感染して発症するもので、国内の推定患者は100万人以上とされています。男女比で見てみると女性の方が多く、特に10〜20歳代の若い層では男女比が1:2と大きな差がみられます。

他の性病との複合感染を起こす

性器クラミジア感染症の患者が増加している理由は、以前と比べて症状が現れにくくなっているため、感染に気が付かないまま、パートナーも感染させたり、治療を受ける機会を逃していることが挙げられます。また、オーラルセックスを行うカップルの増加に伴い、クラミジアが咽頭に感染するケースが増えている点も見逃せません。

クラミジアに感染した女性の場合、自覚症状が現れる人の割合は約20%とされており、その場合は外陰部のかゆみ、排尿時の痛み、下腹部の痛みなどがみられます。

男性の場合、自覚症状が現れる人の割合は、女性よりも多いものの、それでも約50%に留まっています。具体的には、排尿時に尿道にヒリヒリした痛みが走ったり、ペニスの先から透明もしくは白く濁った分泌液が出たりします。

クラミジアを放置していると、女性では子宮頸管炎、不妊、子宮外妊娠、流産などの原因となります。妊婦さんがクラミジアに感染していると、産道を通じて赤ちゃんが肺炎を起こしたり、結膜炎になったりすることもあります。

男性では精巣でつくられた精子が通過する精巣上体(副睾丸)に炎症を起こし、男性不妊の原因になることもあります。

クラミジアに感染している人は、淋菌と複合感染していることが多く、淋菌性尿道炎に罹っている人の約20〜30%は性器クラミジア感染症を合併しているとされています。コンドームを使用しない無防備な状態でセックスを1回行うと、クラミジアや淋菌に感染するリスクは約33%もあるとされ、性器に傷があったり、菌を含む膿汁がたくさん出ている場合、そのリスクはさらに高まります。

クラミジアの感染を診断するためには、女性の場合、子宮頸管に綿棒を入れて膣の分泌液を調べます。男性は朝一番に出る尿(初尿)を遠心分離器にかけて調べます。

治療の際には、1回の服用で高い効果を示すアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)という抗生物質が主に処方されます。しかし、せっかく治療しても、パートナーが感染していれば、再びクラミジアに感染する恐れがあります。そのため治療は両者が同時に行い、治療が終了するまでセックスを控えることが大切です。

性器以外にも病変が現れる性器ヘルペス尖圭コンジローマなどはコンドームによる感染予防の効果が限定されますが、性器クラミジア感染症は性器同士が接触する前から、セックスの終わりまでコンドームを装着していれば、感染を避けることができます。


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