パートナーが健康そうだから「性病は移ってない」と都合のいい解釈をするのは禁物です

就職活動とゼミの活動に追われている大学4年生の健一郎君(仮名)は、ある朝トイレでオシッコをした際にピリピリとペニスに電流が流れたような痛みを感じて、思わず声をあげてしまいました。しかも、トランクスを触ってみると、ペニスが収まっている場所がやけに濡れている…。

感染の事実を交際相手に伝えることが大切

彼には同じゼミに所属している彼女がいますが、無防備なセックスはしていないので、性病の可能性を疑うことはありませんでした。「手をよく洗わないままオナニーをして、手に付いたバイキンがチンコに入ってしまったかも…。膀胱炎ってやつかな?」というのが、彼なりの推論でした。

「原因がなんであれ、このことは恥ずかしくて彼女に言えないな。そもそもセックスは大丈夫なんだろうか?」 そう思って数日たったころに彼女から電話がありました。すると意外なことに、開口一番「最近、体の調子でどこかおかしいところない?」と訊いてきたのです。

どういうことかと問い返すと、「先月の中旬くらいからアソコがムズムズしたり、おりものの量が増えた感じがしたから、思い切って婦人科クリニックで検査してもらったら、淋病だって言われたの。今まで病気のことを隠していてゴメン!」とまさかの性病の感染を告白されたのです。

「お前はどこから病気をもらってきたんだ!?」と問い詰めようと思いましたが、実は彼も付き合い始めて日が浅かったころに一度だけの浮気を経験しているので、ここはグッと我慢して、正直に話してくれた彼女に感謝して、自分も泌尿器科で検査を受けることにしたのです。

淋菌の陽性反応が出た患者

案の定、彼も淋病に感染していました。診察した医師から「淋病は抗生物質が効きにくい"薬剤耐性菌"が多いからね。」という話を聞かされたときは焦りましたが、幸い、ほとんどの患者さんに最初に使用されるセフトリアキソン(商品名:ロセフィン)という薬を注射することで、大事に至らずに済みました。

このように、セックスで人から人へと感染する性病は、パートナーの感染が確実になった時点であなたも感染しているリスクがあります。その場合は一刻も早く婦人科、泌尿器科、性病科などで検査を受け、感染が確認されたならば二人同時に治療を行う必要があります。

しかし、健一郎君の彼女のように自身の感染をパートナーに正直に伝える人は、残念ながら多くはありません。自分が性病であることがパートナーに知られてしまうと、その感染源(浮気、風俗の利用など)を訊かれたりして、最悪の場合、別れを切り出されてしまうのではないかと心配して、内緒にしておくことが多いのです。

症状が出にくい、あるいは感染から発症までの潜伏期間が長い性病の場合、パートナーが元気そうにしているのを見て、「この様子だと彼(彼女)には病気は移ってないな」と都合のいい解釈をして、そのまま放置してしまう例もあります。

性病の感染の事実を相手に隠したまま治療を受けても、パートナーを既に感染させているかもしれません。パートナーが普段と変わりない生活を送っているようだからと以前と変わらないセックスを繰り返していると、今度はパートナーから同じ性病を移されることがあります。

このように性病が互いに感染し、繰り返すことを、卓球のピンポン球になぞらえて「ピンポン感染」と呼んでいます。性器クラミジア感染症は男性で50%、女性の80%で無症状とされており、ピンポン感染が特に起こりやすいので注意が必要です。

女性の性病は自覚症状に乏しく、知らずに彼氏を感染させることも少なくありません

社会人の大吾さん(仮名:20歳代)は、付き合って間もない彼女との初めてのセックスから1週間ほどのちに、排尿時に灼熱間を伴った痛みと、ペニスの先にムズムズとしたかゆみを感じたため、仕事が休みの土曜日に泌尿器科を受診しました。医師の視診と尿検査の結果、性病である「性器クラミジア感染症」と診断されました。

感染源で揉めて別れるカップルも

現在の彼女のほかにセックスパートナーはいないし、風俗にも行ったことがない大吾さんは、「彼女はあんな大人しそうな子なのに、結構、遊んでたんだな」とクラミジアの感染源は彼女だと勝手に判断して、数日後のデートの際に思い切って、「俺、お前から性病を移されたみたいなんだよね。お前も一回、婦人科とかで検査受けてみなよ。医師が言うには、俺たち二人とも一緒に治療しないと、いつまでたってもセックスできないみたいだぜ」と彼女に性病に感染した旨を伝えました。

これを聞いて驚き、そして怒ったのは彼女です。「どーやったらそんなことを言えるわけ? 私は二股かけてないし、異常は症状はなにもないわ!!」 と普段の彼女からは想像できない凄い剣幕だったそうです。

これをきっかけに二人の関係はすっかり冷え切ってしまい、仕事の忙しさも重なったこともあり、あっさり別れることになりました。

結局、二人は破局してしまったため、彼女がクラミジアの感染源であるかはわかりませんでした。大吾さんの伝え方に問題があるかどうかはさておき、彼女の「異常な症状がないから自分が性病であるはずがない」という主張は正しいのでしょうか?

実はここに若い男女間で性病が拡大している理由があるのです。大吾さんが感染してしまった性器クラミジア感染症は、男性は初期の段階から、おしっこをする時の違和感といった比較的わかりやすい症状が現れるのですが、女性の多くは自覚症状がありません。

自覚症状がない状態が続くということは、現在の彼氏と交際する前、つまり元カレから性病を移されていても感染に気がつかないということです。原則、性病は放置していて完治することはないので、そのまま現在つきあっている彼氏とセックスをすれば、当然、彼氏を感染させてしまうリスクがあります。

仮に自覚症状があったとしても、オリモノが少し増えたとかそういう程度です。そのため、実際にクラミジアに感染している女性が婦人科で治療する機会を逃したまま、セックスでパートナーに病気を移してしまうのは決して珍しくないのです。特にクラミジアはセックス経験者の10%前後は感染しているというデータがあるため、身近な存在に感染者がいてもなんらおかしくはないのです。

新しいパートナーができた時、お互いを深く知らないままパートナー以外の人とセックスをした時は、面倒くさがらずに性病の検査を受けるようにしましょう。自覚症状に乏しい性病を早期発見し、大事に至る前に完治させるには、この点が重要となります。

浮気や風俗が原因で性病に感染した場合、どうやって彼氏や彼女に告白・言い訳する?

彼氏や彼女以外の相手とセックスをした、あるいは風俗で遊んでいたら運悪く性病に感染してしまったという方は決して少なくありません。性病は自覚症状が現れるまで一定の潜伏期間があるため、感染が判明した時点で既にパートナーにも移してしまっている可能性があります。

彼女にクラミジアを伝える

当然、パートナーには自身の性病の感染の事実を告白したうえで、検査を受けてもらう必要がありますが、浮気や風俗という「後ろめたい理由」が足かせとなってズルズルと時間だけが過ぎていくという事態も十分に考えられます。

反省した態度で真実をありのままに伝えれば、彼氏や彼女がそこに誠実さを感じとってくれて、一度くらいは許してもらえるものです。しかし、「浮気の"前科"があるので今度こそ別れを切り出されてしまう!」という方には一部の性病に限定されますが、以下のような言い訳もあります。

性器ヘルペス(男女の伝え方)
性器周辺にできた水ぶくれが破れて潰瘍(ただれ)ができ、鋭い痛みが現れる性器ヘルペスは、一度感染すると治療後もヘルペスウイルス(HSV)が体内で潜伏を続けます。そして過労、ストレス、セックスの刺激が原因で何度も再発します。

したがって、仮に浮気や風俗が感染の原因であったとしても、「昔に感染した性器ヘルペスだけど、最近仕事が忙しいせいかよく再発するんだよ」とか言っても不自然ではありません。

トリコモナス(男女の伝え方)
トリコモナスは女性限定の性病と思われがちですが、男性も尿道や前立腺に感染します。女性では泡状で悪臭がするおりものが出る、外陰部や腟の激しいかゆみ、刺激感が現れる一方、男性は尿道炎を引き起こすものの一般的には無症状です。

主な感染経路はセックスですが、稀に温泉やトイレの便座を介して感染することもあるため、「先月、友達と日帰りで温泉旅行に行ったんだけど、どうやらそのときにトリコモナスに感染したみたい…」など男女ともにもっともらしい言い訳ができます。

ただしセックス以外のルートでトリコモナスに感染する確率は稀です。パートナーがネットで調べるとそのことはすぐにわかるので、日頃の行いによっては今後も疑念がくすぶり続ける可能性があります。

膣カンジダ(女性の伝え方)
膣カンジダは女性限定の性病ではありません。セックスを介してカンジダ菌が男性の包皮や亀頭に感染すると亀頭包皮炎を引き起こすため、膣カンジダを発症した女性は男性パートナーにその旨を伝える必要があります。

カンジダ菌は健康な女性でも一定の割合で皮膚や腸内に存在しているため、セックス以外でも感染が成立します。そして過労やストレス、抗生物質の服用などで免疫力が低下すると、繁殖して膣カンジダの症状(膣のかゆみ・灼熱感、ポロポロした白いおりもの等)が現れ、何度も再発を繰り返します。

セックス以外にも感染ルートがあるということは、「残業続きで免疫力が低下しているのかな〜、また膣カンジダになっちゃったみたい」と彼氏に伝えても素直に信じてもらえるでしょう。

クラミジア(女性の伝え方)
感染者が最も多い性病のクラミジアは女性の約80%は進行しないと自覚症状がほとんどありません。つまり、現在の彼氏との交際期間が半年〜1年程度の女性ならば、「最近おりものの状態がおかしいから婦人科で検査してもらったんだけど、なんだかクラミジアの可能性があるって言われての。やっぱり前彼は付き合っている時から怪しいと思っていたのよね〜」など、二度と会うことのない前カレに責任転嫁しちゃってもバレることはないと思います。

ただし以上の伝え方はいずれもパートナーに対する「誠実さ」という面では大きな問題があるので、個人的には推奨できません。

あくまでも、正直な理由(浮気や風俗)を伝えた場合に二人の関係がズタズタになることを避けるための「最終手段」ですので、使用に際しては用法・用量をお守りのうえ自己責任でお願いします。<(_ _)>


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