先進国の中でエイズ等の性病の感染者が増加しているのは日本だけです

性に対する考え方が開放的になり、セックスも多様化している今日、若い世代に性病が急増しています。それは先進国に限らず、世界的な傾向と考える方も少なくないと思いますが、先進国ではむしろ性病の患者数は減少傾向にあり、アジア諸国を見ても性病の患者数が右肩上がりで増加しているのは、日本と中国くらいと言われています。

20代のカップルは感染リスクが大

日本での性病患者数の増え方を端的に示しているのは、HIV患者の増加です。HIVの患者数が日本に先駆けて増加した欧米諸国では、1990年代半ばから国を挙げてのエイズ対策を行ってきたため、近年はHIVに感染する人は減少傾向に転じました。

一方、日本では、エイズ対策が本格化する前に「薬害エイズ」問題が重なったため、エイズは血液製剤による被害や輸血で感染する病気だというイメージ、あるいは男性の同性愛者だけが感染する病気というイメージが定着してしまった影響もあり、先進国の中で唯一エイズ患者数が増加傾向を示しているのです。

確かに日本のHIVの感染経路を見てみると、男性の同性愛者によるセックスが異性間のセックスの2倍以上となっています。しかし、20代の若い世代では、双方がほぼ同じ割合になっています。したがって、HIV感染は、男性と女性がコンドームを付けずにセックスを繰り返すなかで、自覚症状もなく相手を感染させてしまう性器クラミジア感染症などと同じ病気として考えるべきなのです。

新規患者数の年次推移

さらに、厚生労働省のエイズ発生動向年報の数字を見ると、国内で報告されているエイズ患者数に比べて、HIV患者数が少なすぎるという指摘があります。これは本来、エイズ患者数の10倍はいるとされるHIV感染者数が、日本では2倍程度と異常に少ない数しか発見されていないのです。すなわち、実際の感染者数は爆発的に多いということになります。

このように新規のHIV感染者の報告数が少ないのは、「自分が感染しているはずがない」と自己判断して検査を受けようとしない中高年の男性が非常に多いのが一因として挙げられます。そして、重篤な症状が出て医療機関を受診してHIVの感染が判明した時には既にエイズを発症してしまっているのです。いわゆる「いきなりエイズ」と呼ばれている最悪のケースです。

日本では各自治体にある保健所で匿名、無料で性病検査(保険証なし)を受けることができ、保健所によっては即日に結果がわかる迅速診断検査(RDTs)を導入しているのに、中高年の方が活用していないのは大変残念なことです。

HIVの感染とほかの性病の感染には密接な関係があります。HIV自体は感染力が弱いのですが、性器クラミジア感染症、淋病、性器ヘルペスなどの性病を持っていると、HIVの感染率は大きく増大するのです。その理由は、これらの性病に感染していると性器の皮膚が荒れやすくなるため、その傷口からウイルスが侵入しやすくなるためです。特にヘルペスのように潰瘍ができている場合は、感染率が約20倍も増加するとされています。

性病の増加にブレーキがかからない背景の一つとして、いまだにコンドームを使用するセックスを良しとしない男性が多いことが挙げられます。これは性病への認識の甘さを示すものです。この傾向が続く限り、無症候のHIV感染が知らないうちに一般社会に浸透しつつあると考える必要があります。

「性病かも!?」と思った時のチェックポイント

男女の愛の営みであるセックスは大切なものですが、リスクを伴う行為であることを忘れてはいけません。既に、自分の性器に何らかの違和感があって「もしかして性病かもしれない…」と気になっている人もいれば、「パートナーが色々な理由でセックスを避けるようになった。なんだか怪しい」と思っている人もいるかもしれません。ここでは性病を疑うべき性器の痛み、かゆみ、膿、できもの、そして性病と紛らわしい別の病気について簡単に触れていきます。

不安な点は医師に相談を!

性器の痛みや違和感がある場合に疑われるのは、淋病や性器ヘルペスなどです。男性が淋病に感染すると、トイレでオシッコをする際に思わず飛び上がりそうになるような強い痛みがあります。また、性器ヘルペスは、潰瘍が再発してピリピリした痛みが続くことがあります。

性器から膿が出る性病には、性器クラミジア感染症淋病、膣カンジダ症、トリコモナス膣炎などがありますが、なかでも多いのは、性器クラミジア感染症と淋病です。クラミジアは透明もしくは白っぽい膿が出て、淋病は黄色っぽい膿が出ますが、色は個人があるため一概には言えません。

男性はペニスをしごくと、先端から膿が溢れ出てきます。精液は粘り気がありますが、膿はサラサラしており、下着の濡れが気になるほど大量に出ることがあります。尿道口から細菌が入り込んで炎症が起きる尿道炎でも、クラミジアと同じような白っぽい膿が出ますが、これは性病ではありません。

性器にできものが現れる性病の代表は、尖圭コンジローマとヘルペスです。尖圭コンジローマは、白もしくはピンク色の先端の尖った小さなブツブツがペニスや膣口付近にできます。注意が必要なのは、フォアダイスといって脂肪の粒が先天的にできているもので、性病の診療経験が浅い医師は誤審して、本来は必要のない治療を行ってしまったという例があります。

一方、性器ヘルペスでは、ペニスや膣口に月面のクレーターを連想させる凸凹したおできができます。おできは指で強く抑えたり、擦ると破れて中から液体が漏れ出てきます。ピリピリした痛みを伴い、指で触れたり、お風呂で洗ったりする際にも石鹸やお湯が染みたりしますので、発見は比較的容易です。ヘルペスが厄介なのは、一度感染すると薬による治療の後もウイルスが体内に潜伏しており、体力が低下した時などに活動を再び活発化させるという点です。

性器にかゆみが現れる場合、膣カンジダ症トリコモナス膣炎、毛じらみなどが疑われます。いずれも我慢できないような強いかゆみが現れることがあります。なかでも主に陰毛に寄生する毛じらみは、患部を掻き毟りすぎて、皮膚が傷つき炎症を起こすこともあります。最近の女性の性病は、症状が現れにくくなっており、軽い程度のかゆみしか感じないものも少なくありません。しかし、かゆみだけでは感染の有無を診断するには至りません。

症状がないからといって放置していると不妊やエイズ発症のリスクを高めます

近年流行している性器クラミジア感染症や淋病などの性病は、かつてのように局部にはっきりとした症状が現れない「無症候化」の傾向が強くなってきています。自覚症状がないため婦人科や泌尿器科で早期の治療を行うことは難しくなってきています。性器クラミジア感染症は放置していると、女性の場合は炎症が子宮内膜や卵管に拡大するため子宮外妊娠や不妊、早産、流産の原因になり、男性の場合は精巣の機能が障害されて、男性不妊の大きな原因の一つとなります。

性病に感染している本人が気がつかないので、その人にセックスパートナーがいれば、相手にも同じ病気を移してしまうリスクは高まります。たとえコンドームを付けていても、オーラルセックスや性器以外の病変への接触でも感染する性病もあるため、安心はできません。

複数の性病を同時感染している人も少なくなく、実際、クラミジアに感染している人の約30%は淋菌にも感染しているとされています。複数の性病を抱えていると、局部の皮膚の免疫力が低下し、そこからHIVなどのより重大な性病に感染するリスクが大きくなってしまいます。

おりものの色や量の異常、性器の痛みやかゆみ、腫れといった性病を疑わせる明確な症状が出ても、特に女性は「男性医師に性器を見せるのは恥ずかしい」という理由で、婦人科を受診しなかったり、ドラッグストアの市販薬を自己判断で使用してさらに症状を悪化させてしまう人もいます。

性病に限った話ではないですが、ほとんどの病気は早期発見と早期治療が最も効果的です。セックスパートナーの多い人、口や肛門を使った類似性行為を行っている人、コンドームを使用していない人などのリスク要因を抱えている人は、症状がなくても一度は性病の検査を受け、陽性ならばパートナーも検査を受けてもらって、キチンと治療を受けるとが大切です。


Copyright (C) 2016 性病の素朴な疑問を解決! All Rights Reserved.