HIVの感染ルートの約70%は同性間(ゲイやバイ)のセックスです

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって発症するHIV感染症は、結核とマラリアと並んで「世界三大感染症」の一つとなっています。WHO(世界保健機関)の統計によると、世界のHIV感染者数は約3,500万人とされており、年間約150万人がHIVに感染する疾患で死亡しています。

同性間にHIV感染が多い理由

しかし、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が2015年に発表した統計によると、新規HIV感染者数は減少傾向にあり、14年間で約35%も少なくなっています。そんな国際的な流れに逆行しているのが、日本なのです。

厚生労働省が発表した統計によると、日本国内におけるHIVの新規報告数は1,590人(2013年)となっており、2007年以降、新規のHIV感染者数は1,000人以上で高止まりをしたままになっています。また、新規報告者の中で最初からエイズと診断された新規エイズ患者は484人と過去最高を記録しました。日本ではこのように、エイズを発症するに至って、初めてHIV感染の事実に気付く人が多いのが問題となっています。いわゆる「いきなりエイズ」と呼ばれている状態です。

日本国内におけるHIV感染者とエイズ患者の累計報告数は23,000人を突破し、増加の一途をたどっています。感染経路として最も多いのが「同性間の性的接触」で全体の約70%を占めています。ここでいう「同性間」とはゲイやバイなどのMSM(Men who have Sex with Men:男性とセックスをする男性)を指しています。

MSMに次いで「異性間の性的接触」で約18%、以下「静脈注射の使い回し」が0.2%、「母子感染」が0.1%となっています。同性間(≒男性間)と異性間のセックスで大きな差があるのは、同性同士のセックスはアナルセックスが多いためです。肛門は皮膚粘膜が傷ついて出血しやすいため、HIVの感染リスクが約10倍も上昇してしまうのです。

またゲイやバイ同士のセックスは「妊娠のリスクがゼロ」という理由で、異性間のセックスに比べてコンドームを使用する率がどうしても低くなる傾向にあります。その結果、クラミジアや淋病、梅毒、ヘルペスなど、HIV感染症(エイズ)以外の性病に感染しやすくなります。

性病の感染部位は粘膜のバリア機能が破壊されているので、HIVの感染リスクも高くなります。こうしたこともHIV感染者にゲイやバイの男性が多い大きな原因となっています。

保健所で検査が受けられます

HIVは感染者の血液、精液、膣分泌物、母乳などに含まれているので、日常生活における握手、キス、入浴、食器の共有などで移ることはまずありません。ただしオーラルセックスは性器と口腔粘膜が接触するため、HIVの感染リスクはあります。

HIVは感染後、長い間無症状で進行すると思われていますが、実は感染直後に約半数の人には、約数週間にわたって高熱や頭痛、筋肉痛といった風邪によく似た症状が現れます。不幸中の幸いにも、この段階でHIVの感染を疑って保健所や医療機関で検査を受けることができれば、薬物療法でウイルスの増殖を抑えてエイズが発症しないようにコントロールすることが可能です。

この機会を逃すと検査を受けて確認しない限り、本人がHIVの感染を疑うことはなく、数年から十数年という長い無症候期に入ります。症状は全く現れないものの、体内ではHIVと免疫が水面下で激しい戦いを行っており、徐々に免疫力が低下していきます。

免疫機能が破壊されて様々な病気に感染

その結果、通常なら健康に影響を及ぼさないウイルスやカビなどの病原体によって、肺炎やカンジダ症などさまざまな感染症(日和見感染症)を発症するようになります。この日和見感染症には多くの種類がありますが、指定された23の感染症のうちいずれかを発症した時点で、エイズ(後天性免疫不全症候群)と診断されます。

1990年代の半ばまでは、「エイズ=死は避けられない病気」とされてきましたが、複数の抗HIV薬を併用する「多剤併用療法(HAART)」が大きく進歩した現在、HIV感染症を完治することはできないものの、ウイルスの複製を抑えることで、免疫力を回復させることが可能となりました。内服は生涯にわたって継続する必要があるため、通院は欠かせませんが、日常生活は普通に送ることができるまで治療は進歩しているのです。

HIVの感染経路の約90%をセックスが占めていますので、予防のためには他の性病)と同じく、コンドームの使用を徹底することが大切です。また、性器クラミジア感染症淋病梅毒などに感染しているとHIVの感染リスクが高まるため、他の性病にも注意しましょう。

自身がHIV検査を受けるだけでなく、セックスパートナーに受けてもらうことも大切です。HIVは感染してから10年以上経ってから、初めて感染に気付くこともあり、知らない間に移してしまっていることがあるためです。

他の先進国に比べて、日本で「いきなりエイズ(HIVの感染が確認された時点で既にエイズを発症している状態)」が問題となる背景には、HIV感染症を他人事だと思って積極的に検査を受けようとしない20〜50代の人が多いということがあります。しかし、HIV感染症はエイズを発症する前に早期発見して、薬物療法を開始することが肝心です。ご自身だけでなく、大切なパートナーのためにも検査を受けるようにしましょう。

HIVの感染の有無を調べる「HIV抗体検査」は病院だけではなく、お住いのエリアにある保健所でも無料&匿名で受けることができます。1日当たりの受診人数や時間帯の制限、要予約などの条件が設けられているケースも少なくありませんが、1時間以内に結果(陽性or陰性)がわかるHIVの迅速診断検査(RDTs)を導入している保健所も徐々に増えており、会社帰りに手軽に検査を受けられるようになってきました。


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